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「第八回 塩尻能によせて」
・見どころ
塩尻市で平成9年に能の公演が始まり、今年で8回目となります。
この間に多くの地域の方々に能と狂言を知ってもらい楽しんで頂いてきました。
今回の「俊寛」は、平家討伐を企んで失敗し、流罪となった男、俊寛の人間ドラマとも言える、
歌舞伎にもなるような劇的興奮を伴う大変面白い能です。
シテ俊寛を演じる野村四郎氏は、当代随一の優れた能の演技者であり、
その深い洞察力の上に立っての舞台表現は、観る人を強くひきつけ、
一人の男の背負った人生ドラマを皆さんに強く印象づけるでしょう。
また、私と光が演じる「猩々乱」は、うってかわって明るい祝いの心にあふれた曲です。
ストーリーというよりも、真っ赤なかつらと真っ赤な装束を着けた酒の大好きな、
いわば、妖精が二人、波を足先で軽く跳ね上げながらすべるように舞う、
能の舞と能の音楽を存分に楽しんで頂ける能です。
赤ずくめのその姿は、能を観る人演じる人、その場のすべての人が共に生き生きとして在ることの
「喜びのあらわれ」として感じられると思います。
・日本人と能
能はわかりにくい、言葉が古くて聞き取りにくいと言われますが、
日本人が日本人として、その各々の感性を存分に生かして、舞台を見ていただきたいと思います。
能は650年という長い歳月、脈々とその時代その時代を生き抜いてきた日本が世界に誇れる伝統演劇です。
観客も演者も共に同じ空間に身をおき、リアルタイムにその時間を楽しんでみてください。
能の教室に通う子どもたちは今、能を通して、日本人の精神と文化を、
声を出し身体を動かしてどんどん吸収して身につけていっています。
今年4月から文部科学省により古文、漢文が小学校の国語に(また他の課目にも)取り入れられることになりました。
今回の狂言「柿山伏」も小学校の国語の教科書に掲載されています。
教育関係者の皆様をはじめ、児童、生徒、保護者の方にもぜひ本物の舞台を見て頂きたいと存じます。
・子どもと能
能を体験した子どもたちは口々に、「能っておもしろい!」と言ってくれます。
体と声をいっぱいに使って、お腹に力を入れて真っ直ぐに立つ、
そのことだけでも難しいけど面白いと感じる、そんな子どもの柔軟な心と体。
日本人のもつ根源的な力を、体で考える力を小さい時に教えたいと思って指導しております。
子どもたちの元気いっぱいの舞台を見てください。
観世流能楽師 鵜澤久
(2012年3月10日)
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